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2008年 11月 16日 ( 1 )

テリー

らもす・・・お母さんは、いまでも忘れられない仔がいるんだぁ。テリーって名前だったんだよ。
今日は、どうしてもテリーを思い出したいんだ。聞いてね。


その日、いつもなら門灯ひとつがポツリと灯る田舎町の小さな中学校。
その正面玄関には、何人かの先生と校長先生が行方不明の4人の生徒を探していた。
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その頃、行方不明になっていた4人の女子生徒たちは必死に助けを求め走っていた。
その1人の胸に抱かれていたのは、小さな生まれたての子猫だった。
テリー・・・その小さな仔の名前。彼女達が付けた名前。

遡ること3時間前。
彼女達はテリーの異変に気がついた。
いや、もしかするとこんな日がいつか来ると不安を抱えていたのかもしれない。
でも、彼女達は自分達だけで救えるものだと信じていた。
助けられるのはこの世で自分達だけしかいないと思っていた。
その彼女達の真っ直ぐな自信が、恐怖と不安に変わったのがちょうど3時間前。
テリーの嘔吐と衰弱が、彼女達を走らせた。
誰かに助けてもらおうと、必死に走る選択へと変えさせた。
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テリーの鳴き声が消えていく・・・
テリーの目が開かない・・・
テリーの尻尾が揺れない・・・
テリーの 
テリーの 
テリーの・・・
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心細くなった4人の女子生徒たちは、近所の男子生徒の家へと向かった。
そして、お医者さんを探して欲しいと泣き付いた。
その男子生徒はもう一人の男子生徒に連絡し、そのお母さんから動物のお医者さんの場所を教えてもらった。
4人の女子生徒たちと、2人の男子生徒たちは、一緒にその場所へと急いで走った。

初めて訪れる動物のお医者さん。
初めて見る診察台。

6人の不安は希望へと変わった。
「これで助かる。テリーは戻ってくる。だって、だって、お医者さんが診てくれるんだもん」

しかし、その希望は、たった5分で・・・
6人の口から、「なんで?なんでテリーは治らないの?」と、お医者さんを責める言葉へと変わっていた。お医者さんは、駄々っ子を宥めるように静かに話し始めた。
「この子猫は、まだ母猫のおっぱいを飲んでなきゃいけないくらいの赤ちゃんでね、お母さんから離してはいけなかったんだ。お母さんのおっぱいと、お母さんが傍にいないと生きていけなかったんだよ・・・」と・・・
「でもミルクもあげたよ。でも暖かくしてあげたよ。でも遊んであげたよ。でも、でも、でも・・・」
6人は母猫の代わりを充分したのに、なぜそんな事をお医者さんが言うのかわからなかった。
お医者さんは静かに、そして強くこう言った。
「このままでも死んじゃうけど、ねむったままで楽にしてあげるのがいい」

安楽死・・・
その意味が理解できなかった6人だった。
それを‘殺す‘としか思えなくて最後まで抵抗した。
しばらく6人は円陣を組み、相談する振りをした。
この間にお医者さんの気が変わってくれる事をただ願っていたのだ。諦めたくはなかった。
しかしお医者さんは、6人の心を察したのか、今度は怒った口調で
「この仔が苦しんだり、辛くてもいいのか!」 そう言った。

6人はハッとしてテリーを見た。
テリーは、此処に連れてきた時と同じ格好でそこに横たわっていた。
手や足や頭や尻尾は動いていない。ただ、弱くお腹が上下してるだけ。

・・・・・・・・
・・・・・・・・
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6人はもうこの選択しか残されていないのだと悟った。
6人はテリーを囲んでお別れをする。
頭を撫でて、背中を撫でて、喉元を撫でる。

みやぁ~

かすかに、声にならない声でテリーは鳴いた。
信じられない事だが、本当にテリーは応えてくれた。
その声を聞いた途端、それまで抑えていた全ての感情が一気に涙になって溢れてきた。

そして6人は、殺してしまうという罪悪感と、テリーの明日を奪う決断を自分達がしてしまった恐さに押し潰されそうになっていた。
その場から離れ、外で待つ。
地面に転がる石ころを踏みつけながら、みな黙っていた。
沈黙の中、テリーは小さなタオルに包まれお医者さんの手から、6人の手へと戻ってきた。

テリー、ごめんね、ごめんね、ごめんね。。。
ずっと一緒に居たかったのにね~

幼い心を持った6人は、テリーの冷たくなった体を見ることも、触る事にも恐さを感じてた。
最期まで向き合う心が欠けていた。早く、この現実から逃げ出したい気持ちだった。
淡々と、テリーのお墓を作らなきゃ・・・誰かがそう言った。

2人の男子生徒は別の男子生徒2人に連絡して8人になった生徒たちは、
右手に道路をはさんで見える学校を通り過ぎ、そのまま国道沿いにあるお寺へと向かった。
お寺の住職さんに事情を話し、「お墓を作って欲しい」とお願いすると
住職さんは本堂へと8人を招きいれてくれた。
テリーのためにお経を唱えてくれると言う。
人間のお墓しかないものだと思ってた8人は、このお寺に動物のお墓があると初めて知った。
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テリーはそこにねむる。今でもねむっている。
10日前にダンボール箱の中に置き去りにされた捨て猫。
推定たった10日間の命だった・・・

もう辺りは真っ暗になっていた。

by loveletterjunkone | 2008-11-16 06:54 | 動物のこと